第9章 restart and redo.
●no side● 〜体育館裏〜
奇跡と謳われた者たちと歩んだ、栄光の軌跡。
それでも黒子は、大切なものの欠落を感じていた。
そして、昨年の全中での出来事を経て、今…
数奇な身の上を呪い、捨て去りたいと願った過去をそれでも背負いながら。
黒子は今日、誠凛高校へと足を踏み入れた。
そんな黒子の心に、夜の帳が下りるようにまたしても黒い影が陰ろうとしていた。
あたかもその女の子は、黒子に「過去を忘れることは決して許さない」とでも言うかのように現れた。
取り憑いたら逃がさない、悪の化身のように思えた。
しかし…
黒子に何かを科すように現れた、強豪校の元レギュラーの女の子。
そして、今日たまたま巡り合い、春の暖かな日差しの下で友人となった藤堂。
2人が、同一人物だと確信したとき。
黒子が思い出したのは…
忘れることの許されなかった黒い過去を、丸っと覆い隠したのは…
なぜか、苺の香りだった。