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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第9章 restart and redo.


●no side● 〜体育館裏〜


黒子は今、一人では決して辿り着けなかったところに立っている。
もっとも、それはリコと伊月も同じである。


過去の“事実”を持つリコと伊月、現在の“情報”を持つ黒子。
それを一つにした今だからこそ、出来ることがあるのだ。


今なら知ることが出来る。
黒子が考えずにはいられなかった、「藤堂がなぜ誠凛高校にいるのか」という疑問に対する答えを。


そんな風に思ってしまったことを、黒子は悔いた。
そして心の中で、「ごめんなさい、藤堂さん」と呟いた。


自分の行動によっては、藤堂をバスケ部から遠ざけることが出来るのであろう。
“物理的に”…ではあるが。


それでもやはり、自身の好奇心は止められない。


今朝、1-Bの教室で見つけた藤堂。


不思議とバスケ部のビラだけを持っていた藤堂。


クラスメイトとして、初めて言葉を交わした藤堂。


いま考えてみればあのビラは、今朝の部活動勧誘においてバスケ部が藤堂に渡したもので。
その時からバスケ部は、藤堂を探し始めていたに違いない。


そして、バスケ部が藤堂を探すその途中に、他でもない自分がいたのだ。


黒子は想像もしていなかった。
部活終わりに先輩に声をかけられただけで、まさかこんな事態になるとは。


偶然にも「全中決勝に進んだ、強豪校の元レギュラーの女の子がいるかも」という話を耳にした時。


黒子の影には、あまりにも残酷すぎる過去の物語がチラついた。


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