第9章 restart and redo.
●no side● 〜体育館〜
リコが黒子の腕を引き、伊月が火神の背を押す唐突な展開が。
出口付近で固まる2年生の輪に、ちょっとした変化を起こした。
現時点で伊月が想定しているのは、火神をこのまま体育館の外へと連れ出すことだ。
その背を押し、火神が抵抗もなく素直に従ってくれさえすれば、それは叶う。
しかし、それを邪魔する者たちがいた。
タイミング悪く体育館の出口付近で駄弁っていた、日向たち2年生だ。
それだけならまだ良かっただろう。
日向や小金井たちに気づかれないよう、黒子と火神を静かに連れ出すことも出来たはずだ。
ところが、事情を知らない火神がその輪に自ら近づき、あろうことか声をかけてしまった。
この時点で、「静かに連れ出す」と言う選択肢が無くなってしまった。
だから伊月は、力任せの手段を取るしかなかった。
とは言っても、ただでさえ巨体の火神を難なく連れ出せるわけもなく。
ましてや、同輩たちを避けている余裕などない。
それでも、今は一刻も早く体育館を出なければならない。
そのためには…
どうしても、2年生の輪を突っ切るしかなかった。
出口までの最短距離…
それは、遠回りも何もせずに真っ直ぐ進むことだ。
そうするとどうしても、輪を断裂させるかのように進むことになってしまう。
もしかしたら、衝突が起こるかもしれない…
日向たちには申し訳ない、と思いつつ。
それでも伊月は、今は自身のわがままを通させてもらうことにした。