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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第4章 この道、桜吹雪につき。注意。


●藤堂 天● 〜登校〜


『ん〜、やっぱり朝にパンだと
 ちょっと物足んねぇ~な…』


そう思って、ビニール袋の中を覗く。
そこには、昼食用として購入したパンと、そのお供のパックのカフェオレ。
あと、コールスローサラダと、ペットボトルの麦茶が入っている。
「それしか入っていないのか」と聞かれたら、それはノーコメントだ。


『…もう一つ食っちまおうかな?』


そう呟きながら、空になったパンの袋を投げ入れる傍ら、パンの袋を1つつまみ上げる。
両手で袋の端を摘み、別方向に引っ張れば、私の手元でバリッ!っという音が鳴る。


本来であれば、昼食時に腹に収まるはずだったのだが。
腹の虫の声を聞くと…


ぐるるるぅぅぅ〜と、空の状態とはまた違う、何かしら腹に入っている時独特の音が鳴り響いた。


この調子だ。
腹の虫は収まるどころか「さっさと次よこせ」と、ブーイングを続けている。


しかしこれじゃあ、昼が足りなくなってしまう。


まぁ、ウチの学校には購買もあるって話だし。
その時考えればいいか。
…と、あくまで楽観的に考えることにして今はひたすら、口にパンをはこんだ。


でも…やっぱり、朝にパンは失敗だ。


いま喉を通っていったこれで、もう6袋目だ。
流石にここらでやめておくか。


そう思い、袋の中に伸びかけた手を引っ込めて、ただただ学校へと脚を進めた。


『にしても。桜。綺麗だな~』


こんなに一斉に綺麗に咲くの、東京だと普通なのかね?
この桜の木が連なる道にたどり着いたということは、学校ももうそろそろのはずだ。


そう思ったのと、同時だった。


バリッ!っという音が、私の耳に入ってきた。


『あ。』


“何か”の開封音が響いた。


“何か”とは言わないが。


嫌な予感がする。


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