第4章 この道、桜吹雪につき。注意。
●藤堂 天● 〜登校〜
プレイリストの曲が、私の世界を彩る。
厳選したローテンポメドレーが、私の失敗を肯定しつつ慰めてくれる。
さっきコンビニで買ったパンを頬張りながら、新しい学校へと脚を動かした。
『ん〜おにぎりとかに
しときゃよかったかも…』
とか言ってみるけど、おにぎりコーナーに行く勇気はなかった。
あのサラリーマンっぽい人に鉢合わせすることが、どうしても耐えられないから。
私もシーチキンおにぎり食べたかった。
朝の失敗(3度目)をボヤきながらも、脚はやっぱり学校への道を着々と進む。
こっちに来てから一、二度。
下見として、何度か通学路を通ったので道は頭に入っている。
記憶的な意味で。
逆に言うと、地理感は皆無だ。
住みなれた街を歩くのとはわけが違う。
だから、もし仮に。
猫かなんかを見つけて、それを追いかけて通学路から外れようものなら、一発で迷う。
見慣れない風景。
踏み込んだことのない道。
どこに繋がってるかわならない十字路。
これからは、それらが当たり前になると思うと、未開の地に対する不安と。
それとはまた別の感情が湧いてくる。
ソワソワするというか。
くすぐったいような。
なんとも言えない、新鮮な気分だ。
新しい街へ来た時は
誰でもこんな気分になるのだろうか?
そうなんだとしたら、引っ越しも言うほど悪くないものだと思えてくる。