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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第9章 restart and redo.


●黒子 side● 〜体育館〜


「そのポテチちゃんが本当に、
 “藤堂 天”本人かどうかだって
 まだ分かんねぇーんだよ。」


片鱗はあった。
「もしかしたら」と思ってしまうほど、思い当たる節があまりにも多すぎた。


それでも確信に至るものだけは、いつも遠回りで…


最終的に黒子の元へ舞い降りた一つの“真実”は、


「藤堂…天?」


その名を持ってして、全てを語った。


藤堂 天。
それは1-Bの教室において、黒子の隣の席に座る女子生徒の名前に違いなかった。


そして、2年生たちが語った話の断片を、黒子が繋ぎ合わせた結果。
藤堂は全中の決勝に出場した、強豪校の選手だというのだ。


黒子はその情報を耳にした瞬間、いま自分の近くで何が起こっているのかを即座に理解した。
そして同時に、己を取り巻く物事の理由さえも理解した。


なぜバスケ部であるリコと伊月が、藤堂を探すのか。
なぜ先輩たちが部活後に疲労を抱えながらも、ここにはいない一人の女の子のことを話題にせずにはいられないのか。


黒子には、全てが理解できた。


しかし…


そうじゃない人物が一人いた。


黒子のように個人的な“情報”を持たず、2年生のように知識的な“事実”も持たない。
現実から隔離されている唯一の人物が…


その人物は、


「おい、さっきから一体何なんだよ」


と言いながら、出口付近で固まる2年生の輪に向かって歩き出した。
目の前にいる先輩2人と、クラスメイトの元を離れて…


一方リコと伊月は、自分たちの元を離れ同輩の輪に近づくその背中を…火神の姿を見て息を吞んだ。


そして、途端に慌てだした。


火神が今からしようとしていることは、例え何であろうと物事を確実にマイナスに向かわせることが2人には分かった。
大きすぎる火神の背中が、着実に小さくなっていくのを見て「このままではマズい!!」と脊髄反射で判断する。


そんなことなど微塵も知らない火神は、先輩2人にとどめを刺すかのように口を開いてしまったのだ。


日向や小金井ら2年生を前にして。
先ほどから度々話題となっている、どうやら自身のクラスメイトであるらしい、藤堂 天という少女の話を。


「その藤堂だとかいう」


しかし…


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