第9章 restart and redo.
●黒子 side● 〜体育館〜
先ほど2年生の間だけで済んでいた噂話を、大声で公表してしまった土田の隣で、
「そうなんじゃないか、って伊月の憶測だ。
そのポテチちゃんが本当に、」
日向が静かに喋り始めた。
そして、日向が口にした“ポテチちゃん”。
普通であれば意味不明な言葉の出現に、事情を知らない者たちはただただ首を傾げるだけであろう。
しかし、黒子だけは違った。
その“ポテチちゃん”という言葉から、あるものを連想させられる程に…
黒子は今日、あまりに沢山のものを見過ぎていた。
瞬間、黒子の頭の中は言葉で満たされた。
春、誠凛高校、入学、本、少女、ポテトチップス、教室、隣の席、クラスメイト、藤堂 天、新入生、同い年の女の子、友だち、バスケ部のビラ、無所属、理由。
放課後、バスケ部、入部、先輩、同輩、期待、火神 大我、練習、捜索、解答、疑問、一年前の全中、決勝、出場、強豪、女の子、憶測、ポテチちゃん、勧誘。
黒子が連想した言葉の数々…
繋がるようで、いまいち繋がらない。
しかしいま一度、後押しする何かがあれば。
たちまちそれらは、意味と繋がりを持ち始めるであろうことに、黒子は気づいていた。
そして、“真実”はついに姿を現す。
聞き逃すことのないよう、耳をすませた黒子の元に届いた日向の、
「“藤堂 天”本人かどうかだって
まだ分かんねぇーんだよ。」
その言葉一つで。
黒子の中でバラバラだったピースが、“カチリ”と音を立てて組み合わさった。
一つの高校。
そして一つの体育館で、別々に進行していた2つの話。
黒子はその2つから、それぞれ別の言葉たちを連想した…はずだった。
しかし、一見関連がなさそうでも、言葉がピースとなり“パズル”という形で全てが1つとなった時。
混沌の中から、浮かび上がってきた言葉は…
“ 同 一 人 物 ”。