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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第9章 restart and redo.


●リコ side● 〜体育館〜


それはあたかも、幻のようで。


幽霊のように現れた少年が、気まぐれに、悪戯に。
こちらを揶揄っているだけのようにも思えた。


森林の奥地に足を踏み入れた時。
草や木が風に揺れる音のせいで、まるで山が呼吸しているように思えたり。


泳ぐことを忘れ、ただプールの最下層で漂っている時。
鼓膜を圧迫される感覚や、残りの酸素、人の声が行き届かない恐怖を覚えたり。


まるで、そんな一幕を味わったかのようだった。


それほど不可思議で不可解で。
超常現象を肌で味わっているような感覚に、リコと伊月は陥った。


そんな感覚も、時が経てば氷のように溶ける。


「藤堂 天さんなら、
 ボクと火神くんと同じクラスですよ」


呪縛から解き放たれたかのように、麻痺した頭に情報が正しく流れ込んだ時、


「「 えぇ〜〜〜!?!?!? 」」


リコと伊月は、ようやく状況を飲み込んだのであった。


秘密裏に調べていたことも忘れ、つい声が大きくなる。


先ほどまでは、2年生の間だけの単なる噂話に過ぎなかった。


昨年の全中決勝に出場した、強豪校のレギュラーの女の子が。
ここ、誠凛高校にいるかもしれないということ。


そして今。
疑念が確信へと変貌を遂げた。


本当に…


藤堂 天が、誠凛にいたのだ。


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