第9章 restart and redo.
●リコ side● 〜体育館〜
リコが“焦り”と対になるよう、同等に抱いていた“期待”と言う感情。
それに一番驚いていたのは、何を隠そうリコ本人であった。
自分が思っていた以上に、そんな感情がリコの内情を支配していたのだ。
“ポテチちゃん”を心待ちにする気持ちが、無意識のうちに大きくなり始めていた。
しかし、そうなっても仕方ないのだろう。
リコは理由(わけ)あって、これまで1年近く男子バスケ部の監督兼マネージャーを務めてきた。
“監督兼マネージャー”と、口にするだけなら造作ない。
しかし実際は、肩書だけでは表せない苦労や努力が詰まっている。
誰しも、日夜身も心も時間も削るような現実に生きていたら。
例え無意識でも、夢はいくらでも見てしまうだろう。
自身の負担や、プレッシャーが削減されるような夢が。
現実になればどれだけ良いだろうと、願ってしまうものだろう。
その女子生徒のことを、放っておいてあげるべきとも思った。
どうしたってバスケ部であるリコたちが、関わらないであげることが、「その女の子が望んでいることなのかも」と。
それでもリコは、自身でも知らず知らずのうちに。
顔も知らない“ポテチちゃん”のことを、仲間(マネージャー)として迎え入れるつもりでいたのだ。
日ごろからサポートメンバーを欲していたリコにとって、これは正しく勿怪の幸いだった。
そして、それだけに限らず。
リコが“ポテチちゃん”にこだわる理由が、もう一つある。
そしてそれは、
?「なぁ、カントク」
“ポテチちゃん”の話で盛り上がる輪の中から、1人抜け出し。
リコに声をかけたその人物も、また同じであった。