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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第9章 restart and redo.


●リコ side● 〜体育館〜


「ポテチちゃん来ないよ〜…」

「ぽ、ポテチちゃん…?誰だそれ?」


小金井が涙ながらに口にした言葉に、土田が不思議そうに首を傾げた。


体育館の出口付近で始まった小金井、そして日向や土田のやり取りを、リコが見逃すわけがなかった。


リコは今日一日の練習の様子から、小金井が何かに気を取られていることは早々に気付いていた。
初めは「単に集中出来ていないだけ」とも考えたが…


どちらかと言えば、“心ここにあらず”という様子だった。


それに気づいた時、リコは思い出したのだ。
今朝の部活動勧誘で、小金井が見つけた一人の女の子のことを。


声をかけ、「マネージャーにならないか」と懇願し、部活の見学にまで誘った女子生徒のことを。


“ポテチちゃん”の存在を。


「だから期待すんなって言っただろ。
 つーか、みっともねぇーから泣くな!」

「だってさ〜~~!!」

「“だって”もクソもあるか!」


情けなく涙を流し始めた小金井に対して、日向が活を入れる。
その間に立ち、日向をなだめようとしてオロオロする水戸部。


一方、そんな3人の掛け合いを見たからなのだろうが、


「あれ?俺以外みんな知ってる感じ?」


今朝の部活動勧誘時。
上級生の中で唯一その場に居合わせなかった土田が、バツが悪そうに頬をポリポリと掻いた。


こうして、土田のその言葉を境に、


「あんな?今日の勧誘でコガが」


2年生たちの間で会話に花が咲いたのであった。


部活を終え、疲労を感じながら体育館をあとにしようとしていた部員たちを、少しばかり足止めするかのように。


この時のリコは、同輩たちの様子を伺いながら静かに考えていた。
彼らと同じように、まだ見ぬ“ポテチちゃん”のことを。


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