第9章 restart and redo.
●リコ side● 〜体育館〜
一際目を引く練習着の色。
チャームポイントとも言えるその派手さ。
故にリコは大勢の中からでも、すぐにその背中を見つけることが出来た。
ヒマワリ色のTシャツを身に纏ったその背中は、出口から体育館の外をきょろきょろと見回していた。
文字通り、廊下の端から端まで見逃さないように。
そして、
「おい小金井!
お前さっきっから何やってんだよ?」
その様子に違和感を覚えたのは、リコだけではなかった。
“小金井”と呼ばれた人物が、声に釣られるように振り返ると…
そこには、バスケ部キャプテンの日向 順平。
そして、2年生の土田 聡と水戸部 凛之助の姿があった。
「どうかしたのかコガ?
練習中もずーっとキョロキョロしてさ」
この時、同輩に囲まれ“コガ”という愛称で呼ばれたためなのか、
「うぅ〜…」
小金井 慎二は、ぽつりぽつりと話し始めた。
そして涙ながらに、
「ポテチちゃん来ないよ〜…」
と、口にした。
恐らくその言葉は、やっとの思いで絞り出したのだろう。
「ぽ、ポテチちゃん…?」
小金井が体現した感情。
そしてリコが抱いた感情。
それは、
「誰だそれ?」
“期待”という言葉を纏っていた。