第8章 すれ違いと疑念
●天 side● 〜帰路〜
天は学校から帰るその足で、自宅から一番近いスーパーに寄って買い物をしてきたところだ。
視線を手元に下げ、調達したそれらを見つめながら、天は疑心暗鬼にとらわれる。
今こうして、自身を疑いながらも学校帰りにビニール袋…
改め、買い物袋を2個ぶら下げているのにも理由(わけ)がある。
今季、若干15歳にして晴れて一人暮らしを始めた天であったが。
一つ問題があった。
“一つ”とは言わず、本来であれば問題だらけなのだが。
目下、早々に解決しなければならない問題が一つある。
それは、“食”にかかわる問題だ。
一人暮らしの部屋と言うものは寂しいものだ。
それは、食卓も同じこと。
「帰宅すれば当たり前のように食事が並んでいる」などと言う生温い考えは、上京する際に実家に置いてくるものである。
実際問題、一人暮らしの食卓に料理が勝手に並ぶわけがない。
無論、自炊が必要になる。
そしてそれは、天に当然課せられるべき責任であった。
それが問題なのだ。
自炊慣れしていない…と言うより。
早い話が、天は料理がまったく出来ないのだ。