第8章 すれ違いと疑念
●天 side● 〜帰路〜
その帰り道のこと。
制服姿の天は、中身がパンパンに詰まった大きなビニール袋を両手にぶら下げながら歩いていた。
空はまだ明るいながらも、天の横を往来する数台の車はヘッドライトで行く先を照らし。
店明かりの少ない道の街頭は一足先に灯り始め、天のゆく道を心もとなく照らしていた。
天はそんなことも知らずに、役割を全うするにはまだ刻が早すぎる光の下を通る。
その表情は、決して穏やかではなかった。
今まさに帰路についていることを考慮すれば、大きなビニール袋2個に加えて1日分の疲労も抱えているとも取れる。
だとしたら天のそんな表情も、相応しいと言えば相応しいのだろう。
天が道を歩くときは、決まって傍らにビニール袋をぶら下げているのではないか、と思ってしまう程に。
制服姿にビニール袋を持つその姿は、記憶に新しくやけに様になっていた。
今朝学校に登校する際も、その左腕にはビニール袋がぶら下がっていた。
今と違うところがあるとしたら、その個数と重量感だろう。
両手が塞がっているため、支えを失った通学カバンの紐が肩から何度もずり落ち、天をいちいち苛立たせた。
脚を運ぶ度に音を立てる袋のガサッ!ガサッ!という音が、天の内情を表しているようだった。
・・
決して重いわけではない。
同年代の少女であればとうに音を上げていてもおかしくはないが、天からしてみればどうってことはない。
天の表情が穏やかでないのは、
『買いすぎ…ってこたないよな??』
疲労感や重さよりも、自身の匙加減が適正なのかどうかに、迷いを感じたことが原因だった。