第8章 すれ違いと疑念
●黒子 side● 〜1年B組〜
藤堂が、これ以上の追及を拒んでいること…
それは黒子も察していた。
「人は誰しも、言及されたくない物事がある」と、自分に言い聞かせた黒子は、
「いいえ、こちらこそ
長いことすみません」
内心に萌え始めた疑念の芽を摘むように、幕引きに参じたのであった。
黒子は藤堂に導かれるがまま。
友人が敷いたレールに、自ら進んで乗ることにしたのだ。
それが正解なのかは、今の黒子には分からなかった。
「それじゃあボクは行きますので、また明日。」
『おぉ、見学いっ…てらっしゃい?』
こうして、黒子と藤堂は別れた。
たった1枚の男子バスケ部のビラに、2人はここまで翻弄されてしまった。
しかし、黒子は気持ちを切り替え。
新しい仲間(チーム)に会いに行くため、教室をあとにした。
夜に浸食され始めた春の空と、藤堂に背を向けながら…
決して後ろには振り返らなかった。
仮にここで振り返ってみたとして、その先にいるであろう藤堂と目が合っても。
逆に、合わなくても。
どの道、複雑な気持ちに襲われるということに、黒子は気づいていたから。
だから黒子は、教室の扉を閉めるその時まで、決して後ろには振り返らず。
ガラガラガラ…という音と共に藤堂との間に物理的な壁を築いたら、真っすぐに体育館へと歩き始めた。