第8章 すれ違いと疑念
●黒子 side● 〜1年B組〜
真実を知った黒子は、それでもなお抗おうとして、
「ボクはバスケ部に入るので
藤堂さんも見学に行くなら
どうせなら一緒にと思っていたんですが」
と、藤堂に明かしてみせた。
それで藤堂の心内が変わるとは思っていない。
しかし、最初に口をついて出た「残念です」だけは。
口先だけではない、紛れもない真実だと。
黒子は藤堂に知って欲しかったのだ。
ところが、黒子が言い終わるのと同時に、
『はぁ?!』
人の少なくなった教室に。
先刻よりも赤みが増した太陽が覗き込む、放課後の雰囲気には相応しくない驚愕の声が響いた。
黒子がその声に釣られて、視線を再び上げると。
そこには、驚いた様子で目と口を大きく開き。
体ごと視線を黒子に向けている藤堂の姿があった。
『黒子…くんは、』
先ほどまでの、困ったように視線を逸らしていた姿が嘘のように。
藤堂の黒い瞳は、黒子を真っすぐに見上げていた。
その一瞬、藤堂の瞳の奥から現れた紫の輝きが、
『バスケ部に入るのか?!』
自然光に反発するように迸った。
夕焼けのオレンジに煽られたかのように。