第8章 すれ違いと疑念
●黒子 side● 〜1年B組〜
決して「バスケ部には入らないんですね?」とは聞かなかった。
他の部活動の話題に持ち込んだのは、黒子にとって藤堂に対する救済だった。
藤堂は黒子のその質問に対して、「Yes」と答えるだろう。
そして「自らの目標を叶えるためには、バスケ部には入部できない」と言うことを、黒子に告げるのだ。
であるならば、本望だ。
黒子には、“覚悟”とまでは言えぬものの。
“心の準備”は出来ていた。
しかし、
『いや…そう言うわけでもないんだけど』
藤堂から返ってきた言葉は、黒子の予想を超えるものだったのだ。
困ったように横に逸らしたその黒い瞳を、黒子に向けることもなく。
藤堂の口が再び動き出し、
『ていうか正直、
部活自体にあんま興味が無いというか…』
と、言葉を紡いだ。
結論から言えば、それが全てを表していた。
「部活自体に…」
誰かに用意されたわけでもない。
「Yes」でも「No」でもない。
黒子を困惑させる、藤堂自身のその言葉が。
「入らないんですか?」
これまでと。
そして、藤堂のこれから全てを、
「部活」
表していた。