第8章 すれ違いと疑念
●黒子 side● 〜1年B組〜
決して、気付いていなかったわけではない。
気付かないふりをしていたわけでもない。
広く世界を見てみれば、“男女混合”という枠組みこそ存在するのだろう。
しかし、ごく普通の学校においてそんな概念が存在するわけがない。
それは、誠凛高校においてバスケ部が“男子”と明記されている事実が証明している。
だからこそ、片方の性別だけが集まることで意味を持つ団体の中に。
異性が関与する意味や方法など、端から決まっているようなものだ。
『「マネージャーにならないか」って
声かけられて…』
藤堂も、例外ではなかった。
「マネージャー?」
『そうそう』
藤堂がプレイヤーとしてではなく、マネージャーとしてバスケ部に勧誘されたと言うことに。
黒子は疾うに気付いていた。
そして、黒子に勧誘のビラを見つけられたことは、恐らく藤堂にとっては不本意だったのだろう。
現に、黒子の言葉に受け答えする藤堂の表情は、どこか困惑の色を感じる。
だから黒子は知ることとなった。
藤堂の言動から、彼女はバスケ部に入部するつもりはない、ということを。
そして、今の藤堂は「入るつもりのない部活(男子バスケ部)のビラをきっかけに、クラスメイトに入部を本気にされて困っている」と予想を立てた黒子は、
「他に、入りたい部活があるんですね?」
と藤堂に聞き直した。