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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第8章 すれ違いと疑念


●黒子 side● 〜1年B組〜


『部活?』


藤堂はそう呟きながら、目の前に立つ黒子を不思議そうに見上げる。
ポテトチップスを掴んでいた指を、小さい子どものようにペロッと舐め上げながら。


「はい。今朝、藤堂さんの机の上に
 勧誘のビラがあるのを見たので」

『え…』


黒子のその言葉に、一瞬呆気にとらた様子を見せる藤堂。


「ですので、てっきり
 部活に入るのかと思ってたんですが」

『ビラ…』


聞き逃してしまう程小さく呟いた藤堂は、自らの記憶の中を探り始める。


困惑の表情を浮かべながら視線を落した藤堂の姿には、“冷静”や“集中”。
“追憶”という言葉がふさわしい。


しかし藤堂は、すぐに思い出したかのように、


『あぁ〜!あれか?!』


と言いながら、再び視線を上げた。


『あれだろ?バスケ部のだろ?』

「はい」


藤堂は“バスケ部の”と言った。
しかし、もっと正確に言えばそうではない。


今朝、黒子が藤堂の机で見かけたのは。
他でもない、男子バスケ部のビラだけだった。


そして、これは仮の話だが…
その他沢山の部活動のビラに、紛れるように“それ”があったのならば。
きっと黒子の気を引くまでには至らなかっただろう。


しかし、実際はそうではなかった。
だからこそ、黒子の視線と興味を引き付けたのだ。


『実は、今朝な?』


黒子がこの教室で、藤堂を見つけたその瞬間から。
ずっとずっと知りたくて仕方なかった事実が、今から明らかになろうとしている。

           ・・
女子生徒である藤堂が、男子バスケ部とどんな関係があるのか。


黒子が真剣に見守る中、藤堂は経緯を語り始めた。


『「マネージャーにならないか」って
 声かけられて…』


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