第8章 すれ違いと疑念
●黒子 side● 〜1年B組〜
藤堂は驚いた様子で、隣に立つ黒子の方へと勢いよく振り返った。
その拍子に、藤堂が座る椅子が教室の床を引っ掻き、嫌な音が響く。
『くろ…黒子くん?!』
「どうも」
『いつから?!』
「ずっと隣にいましたが」
隣の席であるにも関わらず、認識されていなかった。
しかし、これも黒子は慣れっこだった。
「ところで、藤堂さん」
未だ驚きを隠せない様子の藤堂を置き去りに、黒子は半ば強引に会話を始める。
基本こうでもしないと、ただ相手に驚かれただけで終わりになってしまうためだ。
「部活動見学には、行かないんですか?」
『え…』
学生生活を送る大多数の生徒たちにとって、放課後の部活動は、教室とは別のもう一つの世界(コミュニティ)だ。
そして、1年B組の教室は今まさに。
部活動の準備、もしくは見学をする雰囲気で満ち満ちている。
それなのに、藤堂はおかしい。
準備をする様子も見受けられなければ、見学へ急ぐ様子もない。
だとしたら藤堂にとって…
『部活?』
部活動と言うものは、いったいなんなのだろう?