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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第8章 すれ違いと疑念


●黒子 side● 〜1年B組〜


音に釣られるがまま、黒子が視線を横に向けると…


そこには、今日新たに黒子の友人となった女子生徒が、黙々とポテトチップスを口に運ぶ姿があった。


女子生徒の名前は、藤堂 天。


今日まで一切面識のなかった黒子と藤堂が、どうやって巡り合ったのかを話せば、長くなってしまうのだが…


簡単に言えば、たまたま同じ学校で、たまたま同じ学年になり、たまたま同じ教室で。
そしてたまたま隣同士の席になったことで、2人は真っ先に友人となったのだ。


黒子は大容量のポテトチップスの袋と、一定のリズムで袋の中身を口に運ぶ藤堂を交互に見ながら。
それが2袋目ではないことを、無意識に祈っていた。


しかしその一方で、黒子は安堵感に似た感情も抱いていた。


と言うのも、今朝は新学期にも関わらず、早々に机の上を物で満たしていた藤堂だったが。
その机上が今はある程度片付いているため、「見掛け通りしっかりしているところもある」と黒子を安心させたのだった。


「あれ程物で溢れかえっていた机が片付いている」。
そこまで考えた瞬間、黒子は大切なことを思い出した。


今朝、藤堂の机の上にあった、男子バスケ部のビラのことを。
途中まで聞いたきりで、答えを先延ばしにされていた事実を。


だから、部活動の準備をする手を止め。
隣に座る藤堂の元へ歩み寄った。


「藤堂さん」

『え』


声をかけた黒子の声に反応するように。
ポテトチップスを摘む藤堂の手が、ピタリと止まった。


そして、


『うわっ?!』


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