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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第8章 すれ違いと疑念


●黒子 side● 〜1年B組〜


 ー放課後ー


放課後の教室は、一日の授業を無事に終えた生徒たちと共に。
また違った一面を見せる。


“それ”は、生徒たちが勉学に励む教育の場の影から。
「今か今か」と待ちながら、その様子を盗み見る。
自分の出番を待っているかのように。


そして時がくれば。
“それ”はたちまち、生徒たちの話題を牛耳る。


高校生活が始まったばかりの、新入生が集まるこの1年B組においても例外ではなかった。


それは…


?「なぁ、お前部活どうする?」


そう、青春にはやはり、“部活”という言葉があってこそ。
学生の限りある時間が、一層輝かしいものとなるのだ。


生徒たちは、放課後が近づく足音に耳を澄ませ。
授業を終えた途端、各々の希望を口にし始めた。


?「私フルート続けるんだ~」

?「まじ?!私も中学吹部だったよ!」


芸を磨く者。


?「女子を拝むためだ…俺は水泳部に入るぞ…」

?「おまっ!
  ロマンのために野球を捨てるのか?!」


才能を開花させようとする者。


若人の向上心は計り知れない。


そんな教室の端の方…


放課後になるとクラスメイト達がまた違う表情を見せることに、趣を感じている一人の少年がいた。


黒子 テツヤもまた、他の新入生たちと同じように。
今まさにバスケ部のところに向かおうと、体育館へ赴く準備をしていた。


ところが、


「ん?」


そんな黒子を足止めする者がいた。


いや…
足止めする“音が聞こえた”と言った方が、正しいのだろうか?


西に傾き始めた太陽の日差しが、物の影を長くし始めた放課後の教室で。
先程から近くで、“サクサクッ”という音がすることに、黒子は気づいていた。


黒子も「まさか」とは思ったのだが…


聞き間違えるわけがない。
規則正しく、リズミカルなこの音は…


“咀嚼音”だ。


「なんで教室でスナック系の咀嚼音が?」と考えながら、黒子が音源の方へと視線を向けると…


視線の先には、黙々とポテトチップスを口に運ぶ、女子生徒の姿があった。


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