第7章 窓際で出逢い
●no side● 〜1年B組〜
一方で、この時の天は…
最初こそ「まさか」とは思ったが、結論だけは何があっても揺るぐことはなかった。
それは文字通り、最初から決められていたかのように…
何度確認しようと、何度見直そうと。
目の前にいるのは、黒子 テツヤ本人であるということを、再確認するのみであった。
さらに聞くところによると、黒子 テツヤはよりによって天の隣の席…
天はまだ自分の中で、状況整理が出来ずにいた。
しかし、寝ているのを黒子 テツヤ起こされたことに関しては、これで合点がいった。
隣の席でもない限り、誰が見づ知らず誰かを眠りから覚まそうとするだろうか。
そんなことを考えながら、天は横に座る黒子の横顔を盗み見る。
こちらの気も知らず、涼しげな顔でHRを受ける黒子の姿は、まるで作り物のようで…
その陶器のような白い肌を見ていると、天の中の羞恥がさらに搔き立てられた。
先ほど、黒子に指摘された右頬の跡のことを思い出して、治まったはずの顔の熱が再熱するようだった。
途端に天は「気にすることない」と言われた右頬の跡が、猛烈に気になってしまった。
そして再び手で覆い隠し、肘を立てて頬杖をつくふりをした。
HRを受ける傍ら、天の頭は隣に座る人物のことでいっぱいいっぱいだった。
先ほどは、黒子につられるがまま「はじめまして」なんて言ってしまったが。
天からしてみれば、黒子は初見どころか、多少の生い立ちまで知ってしまっている人物だった。
最初から素直に「あなたのことを知っている」と言っていれば、状況は全く違ったのだろう。
しかし、今になって考えてみても、どう説明すればよかったのか分からない。
一言では片付けられない…
それが厄介なのだ。
そして何より、
「あの、藤堂さん。
一つ聞きたいことがあるんですが。」
直前の、黒子のあの言葉が気になった。