第7章 窓際で出逢い
●no side● 〜1年B組〜
右手を離した、女子生徒の右頬は…
やはり、黒子がずっと気になっていただけあって、かなりくっきり跡がついていた。
黒子のついた嘘は、結局嘘のままだった。
結果嘘をついてしまったことに、罪悪感を感じる黒子。
しかし、改めて女子生徒の顔を見た今だからこそ、分かったことがあったのだ。
同い年には見えない。
口調も仕草も、大人っぽすぎる。
先ほどまでは、確かにそう思っていた。
しかし、実際は違った。
完璧に見えていた女子生徒が、実はそうではなかった。
他の同年代に比べれば、しっかりしているのは確かなのだろう。
一見そう見えてしまうが、黒子がそうだったように、行動を見ていれば徐々に分かってくる。
実は、登校中にポテトチップスを食べていたり。
それをうっかり落としてしまう程度に抜けていたり。
入学式の朝、教室で寝てしまったり。
机の上が乱雑なのを気にしなかったり。
驚いた時は、大声を出したり。
時刻を知りたくなったら、急いで時計を探し出すせっかちだったり。
頬に跡が付いてることを指摘されれば、その事実に顔を赤らめもする。
その全てを目の当たりにした時。
黒子は、それがなんだか…
可愛らしく思えた。
完璧じゃない。
子どもらしさも垣間見える、そんな女子生徒のことを。
黒子は今、少し理解できたような気がした。
ところで…
まだ名前も知らない状態で、かなり話し込んでしまったことに黒子は気付いた。
だから黒子は「挨拶が遅れましたね」という言い出しで、女子生徒に再度話しかけた。
「はじめまして。
ボク、隣の席の黒子 テツヤです」