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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第7章 窓際で出逢い


●no side● 〜1年B組〜


自身の右頬に、眠っていたことを証明する跡が残っていることを。
黒子が自身の左頬を指差すことで、鏡写しで体現していることに気づいた女子生徒は、その右頬を乱暴に隠した。


?「やっべ…」


その様子を見た黒子は、「やはり教えるべきではなかったかもしれない」と後悔した。


?「恥ずいな、んなみっともない姿…」

「いえ、みっともないだなんて」

?「…酷い?」

「え?」

?「その…跡が」


女子生徒の、その断片的な言葉を繋ぎ合わせた結果。
「跡が酷いのかどうか」を問われていると気づいた黒子は困ってしまった。

  ・・・・
その問題の跡は、女子生徒自身が右手で覆ってしまっているのに。
内心「隠している状態で聞かれても…」という感じだった。


だからこそ黒子は、事実の中に少しの嘘を紛れ込ませることを思いついたのだ。


跡がついていると言うことは、どうしたって変えられない事実だ。
だから今度は、少しでもその事実を忘れられるように。


女子生徒が、今よりも少し安心できるように。


優しい嘘をつくことを、黒子は選んだ。


「ボクも、はっきりと見たわけではないんです」

?「え?」

「前髪が長いので、跡がついていたとしても
 気付かない程度というか」

?「あ…」


黒子がそこまで口にすると、女子生徒も気付いたのだろう。
右手で覆い隠したはずの右頬が、自身の長い前髪で既に覆われていたことを。


女子生徒のそんな様子を見た黒子は、「あともう一押しだ」と思いながら続けた。

 
「だから、そう見えたってだけなので。
 気にする必要ないと思いますよ?」


きっと、この程度の嘘であれば。
この春の青空から自分たちを見ている、お天道様も許してくれるだろうと、黒子は思った。


現に女子生徒は黒子の言葉を聞くと。
少し安心したように、それまでさすっていた右頬から手を離した。


実質、黒子の嘘に救われたのだった。


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