第7章 窓際で出逢い
●no side● 〜1年B組〜
先ほどのガタッ!!という音は、女子生徒が勢い良く椅子から立ち上がった時の音だったのだ。
今朝見た時と変わらず、ショートカットの黒髪が顔の半分を覆い隠している。
しかし、今は少し違う。
立ち上がった拍子に、陽の光を直に受けてしまったためか。
女子生徒は再び目を閉じ、両腕でその視界を閉ざしてしまっている。
それほど、眩しかったということなのだろう。
その姿を見た黒子は女子生徒に対して、ほんの少しだけ申し訳ない気持ちになった。
黒子にとって、周囲を驚かせることなど日常茶飯事ではあったが。
今回ばかりは状況とタイミングの組み合わせが、物凄く悪かったせいでもある。
経緯はどうであれ、立ち上がった女子生徒を前に、丸まっていた黒子の背筋は自然と伸びていた。
そして黒子は、未だ顔を覆い隠している女子生徒と対峙することとなった。
しかし、その状況も長くは続かなかった。
時間を置かずに、女子生徒が顔の前で構えていた両腕を下ろし始めたのだ。
そしてその奥から。
真っ直ぐと黒子を見つめる左目が現れたのを、黒子はしっかりと見ていた。
その一瞬。
陽の光の下に晒された女子生徒の瞳に、紫の閃光が走ったように、黒子には見えたのだが…
?「な…なんで?!」
瞳を露わにした女子生徒の、その声に掻き消されるように。
紫の光は、姿をくらませてしまった。
それを「見間違いだった」と片付けるよりも先に。
黒子の意識は、すでに別のことに向けられていた。
それは、
「“なんで”?」
女子生徒が黒子に向かって口にした、「なんで?」という言葉の真意に関してだ。