第7章 窓際で出逢い
●no side● 〜1年B組〜
天は驚いた拍子に教室の床を蹴り上げ、椅子から勢いよく立ち上がった。
そして、立ち上がったその瞬間だった。
窓から差し込む陽の光で眼が眩む。
天は思わず目を瞑り、両腕で顔を覆った。
先ほどまでは、陽の光など気にならない程だったのに。
天はそのギャップに、またしても翻弄された。
しかし、本当は半ば気づいていた。
その真相を…全ての答えを。
天は気づき始めている。
だからこそ、答え合わせをすべく。
天は閉じた瞼を再び開け、かまえていた両腕をゆっくりと下し始める。
先ほどまで薄れていた意識は、すでに自らのもとに帰ってきている。
だから天は意思を持ったうえで、自らの腕の先に広がる現実を見つめた。
そこには…
空だけが映し出されていた教室の窓。
そして、誰もいなかったはずの隣の席。
眠りにつく直前まで、目の前にしていたその情景の中に。
今は誰かがいる…
くっきりと黒い、誰かの影が。
先程、春日の眩しさをあまり感じなかったのは。
まさにこの“誰か”が、眠る天の陰になっていたためだったのだ。
そして…
天は、その“誰か”の正体を知っていた。
それが、先ほど天が示した動揺の真相だ。
「瞼を開けたら、目の前に男の子の顔があった」。
その状況に純粋に驚いたということも、もちろんあるのだが…
『な…』
天が驚いた、本当の理由は…
『なんで?!』
己の顔を覗き込んできた、その少年を。
天は知っていたのだ。
そして今、天の目が教室内の明かりに完全に慣れた。
それまで逆光で黒く浮かんでいただけの人影が、徐々に本来の姿を現し始める。
忘れもしない…
目の前に現れたその少年は、華の帝光バスケ部でレギュラーとしてプレイした経歴を持つ人物。
名前は…
黒子 テツヤ。