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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第7章 窓際で出逢い


●no side● 〜1年B組〜


顔こそ見えないものの、制服からその人物が女子生徒であると言うことは疑う余地がない。


黒子の視線を引きつけたのは、やはりその風貌が原因であろう。


新学期らしくない雰囲気を醸し出していた火神だったが、この女子生徒も大概だ。
新生活が始まると言う時に、机の上は物で乱れ、おまけにその机に自身の身も投げている。


実際、火神を除けば教室内の誰よりも、今一番異彩を放っているはずだ。
この女子生徒を前にしたら、黒子でなくとも誰だって歩行をやめて視線を向けていただろう。


だからなのだろうか?


黒子の頭は、とある疑問で支配されていた。
至極単純で、シンプルなたった一つの疑問。


それは。
「この子は、どんな子なのだろう?」ということだ。


今日がただの新学期の朝なら、黒子はこんなこと思わなかっただろう。


しかし、そこに一度。
常識などと言うものを全て変えてしまいそうな、異彩を放つ人(もの)がいれば…


異常なほどの影の薄さを持つがため、日頃から常人には理解し難い日常を送る黒子の世界に。


そんな、常識はずれな黒子の世界に割り込んできたのが。
それが例えば…


存在だけでその場に緊張感が走る火神や。
目の前に現れた、その女子生徒だったならば。


黒子の興味を引くには、それだけで十分だったのかもしれない。
だからこそ黒子は、それまで律儀に手に持っていた小説を、自身の机の上にソッと置いたのだろう。


「今はもう眼中にない」と、言い表すかのように。
そして、空いた右手で、肩から外れかかっていた通学カバンの紐を直す。


盗み見たところで、その顔が見えるかも分からないのに…


黒子の目線は、無意識に、でも確実に下がり始めていた。
机に突っ伏している、女子生徒に向かって…


こんなことになろうとは、十数秒前の黒子には予想もできなかっただろう。
増してや、校庭であんなことがあった後に、だ…


教室に差し込む春の光で、温まる背中を丸めながら。
女子生徒の顔を覗き込んだ瞬間…


「…?!」


黒子は息を飲んだ。


その女子生徒は。
覗き込んだ先にいたのは…


黒子が正門前で見つけた、あの少女だった。


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