第6章 偶然目があっただけ
●no side● 〜1年B組〜
ーちょっと前ー
顔に集まる熱に魘されて…
それでも何とか弁解しようと、言葉を探す天だったが、
?「えっ…怖…」
男子生徒のその言葉に、自分の顔が驚きで引きつったのが分かった。
瞬時に、自分はショックを受けているのだと気付かされる。
直球で向けられた、その言葉に…
だがそれ以上に、
「(いや、怖…)」
思いもよらず、過去…と言うにはあまりにも直近すぎるが。
ほんの数分前、自分が他者に向けて抱いていた感情が。
今度は自分に向けられている…
天にとっては、驚愕を受けるのに十分だった。
しかし、それだけでは収まらなかった。
男子生徒から突き放されるように向けられたその言葉は、想像以上に鋭く。
凶器のように天の胸を貫いた。
一体、その言葉がどう言う意味を持っていたのか…
言葉の真意を尋ねようと、目の前の男子生徒を見上げた。
しかし、肝心の言葉が上手く声にならずに、音を失った天の唇はただパクパクと動くだけだった。
やっとのことで、
『…いや!普段はこんなんじゃ』
「こんなんじゃない」。
「いつもの自分は、こんなオドオドしてばっかの変な人間ではない」と…
そう言おうとしたのと、同時だったように思える。
男子生徒は、天の言葉を聞き終わることなく。
“ドカッ!!”っと音を立てて、天の左斜め前の席に座ってしまったのだ。
こうなってしまったら、疑う余地もなく…
完璧に無視されてしまったのだ、と。
天は気づかざるを得なかった。