第6章 偶然目があっただけ
●no side● 〜1年B組〜
その少女は、火神の席の斜め後ろ…
教室の一番端にあたる席の、隣の席に座っていた。
新生活にもかかわらず、学校にも部活にもクラスメイトにも、頑なに興味を示さなかった火神だったが。
この時ばかりは、視線を送らずにはいられなかった。
少女は、通学カバンやらコンビニのビニール袋やらで散らかった机の上で伸び。
仕舞いには、
?「ふぃ〜〜〜…」
という、だらしない声を漏らしていたのだから。
それを幸か不幸か、目の前で見ていた火神だったが。
その眼差しはいつの間にか、不審なものを見る目に変わっていた。
そして火神は、クラスメイトであるにも関わらず。
その少女を「今後、極力関わらない人間」と言うカテゴリーに線引いたのだ。
自身にとって、どうでもいい存在と認識した火神は。
少女から視線を外して、改めて自身の席に座ろうと体の向きを変えた。
ところが、
?「はぁ〜、あみゃい…」
またしても聞こえてきた、その意味不明な言葉の出現に、
「はぁ?」
火神はついに、反応してしまうのであった。
そうなってしまうと、先ほどまでの様なただの傍観者には戻れない。
火神は自らの線引きを、自分で越えてしまったのだ。
だが、気づいてももう遅い。
視線は既に、声と共に少女の方へと向けられてしまっている。
そして、
?「…ん?」
反応を示したのは、火神だけではなかった。
直前の火神の声に気付いたであろう少女も、閉じていた瞼を開け、その視線を火神に向けようと顔を上げ始めたのだ。
その姿を見た火神は、自身の言動が招いたことだと気づき、後悔と共に「ヤベェ!!」と心の中で叫んだ。
しかし、知らないふりをするチャンスは、その時にはもうとっくに過ぎてしまっていた。
そして。
いま、目が合った…