第3章 Reset. And...
●藤堂 天● 〜自室〜
15年間。
毎朝起こしてくれたママは、今は400kmほど日本列島を北上したところに居る。
ほんとは、私が地元から単身南下してきただけなのだが。
これがホームシックってものだろうか。
情けなくて思わず、自分を嘲笑うかのように冷たい笑みが零れた。
制服に着替え終えた私は、先ほどまで制服をかけていた壁に額を落とす。
『…ママ…パパ。ごめんね。こんな我儘な娘で』
ひんやりとした触感が額に広がっていく。
優しいママと、不器用だけど頼りになるパパ。
10年続けたバスケ辞めるって伝えた時も、何も聞かずに「好きにしなさい」って言ってくれた。
正直、尋問される覚悟は出来ていた。
けれど、ビックリするほど何も聞かれなかった。
パパはどうか分からないけど、たぶんママにはバレていたと思う。
それだけでも申し訳ないのに、「生活を変えたいから上京したい」って、「親不孝も対外にしろ」と怒られてしまうような私の希望も、最終的には受け入れてくれた。
解決するまでは結構荒れたけど。
あと、今気づいた。
この部屋の壁ね。
初めはひんやりして気持ちよかったんだけど。
普通に生活する分には気にならない程度の、細かい凹凸があったみたいで…
刺さるんだ。皮膚に。私に。
壁に押し当てた分、今度はヒリヒリとした嫌な痛みが広がった。
“普通”は壁に向かって項垂れたり。
額を押し付けたりしないもんな。