第3章 Reset. And...
●藤堂 天● 〜自室〜
『…制服は、っと』
再び部屋に戻るころには、太陽と暖房の力で部屋がだいぶ温まっていた。
よかった。
寒いままだったら着替えるのも一苦労だった。
体感温度に安堵した私は、賃貸らしい真っ白な壁に吊り下げた、真新しい制服に手を伸ばした。
…と同時に。
ぎゅるるるぅ〜という元気な音を立てて、私の胃袋が細かく。
長く振動した。
「腹減ったな」。
そう思ってベッドの横の時計に再び視線を向けたが…
現時刻、7:37。
どうやらタイムオーバーのようだ。
制服すら着ていないこの状況で、食事まで済ませる余裕は与えてもらえなかった。
『コンビニに頼るか。今日こそはちゃんと作って
弁当持ってくって決めてたんだけどな〜…』
そうは思っても、時間がなければどうしようもない。
朝から犯してしまった失敗に、後ろめたい気持ちになりながらも、新しい制服に袖を通すことはやめなかった。
それに、もっと最悪なことがあって。
よりによって、今日が初日ってことだ。
リスキーなことをしてまで食事をするほど、肝は据わっていない。なにぶん、学生なもので。
この程度の失敗、遅刻するよりはマシだ。
それにしても、私はこんなにだらしなかっただろうか。
これでも人生のほとんど、早起き生活を送っていた身だ。
その早起きをせざる負えなかった、朝練の習慣が無くなって、気が緩んでしまったのかもしれない。
そうに違いないと思った。
だが、すぐに自分自身で撤回する羽目になった。
『…いや。朝練あろうがなかろうが、
15年間ママに起こしてもらってたんだ。』