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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第3章 Reset. And...


●藤堂 天● 〜自室〜


床もまた敵と成り得ることを知った春の朝。
これは今後の課題になりそうだ。


マットかカーペットを買うべきだろうか。
「なんだかんだ畳が一番いい」と謳っていた婆ちゃんに、頭が上がらない理由がもう一つ出来てしまった。


『第一関門突破…次は…』


床につけた無防備な両足は、床の冷たさが移って痛いくらいだが、立ち止まっている時間が勿体ないので、感情を無にして朝の準備を進めた。


私はつま先立ちのまま、スライド式のごく一般的な扉の前に歩み寄った。
いつもならその先にベランダ。
さらにその先には、見慣れない街の風景が見えるはずなのだが。


今は黒の分厚いカーテンに遮られ、二畳分のスクリーンに朝の光景が映し出されることはない。
が、この先に待っているものは、だいたい想像がつく。


扉のちょうど真ん中に立った私は、両手でカーテンの端をガシッと掴んで、ダブルドアを開けるように一気に左右へとスライドさせる。


プラスチック製の金具がカーテンレールをなぞれば、“シャー!!”という乾いた音を合図に部屋に光が差し込んできた。


『うわ眩しっ…!』


覚悟はしていたが、突如飛び込んできた光に目をギュッと閉じる。
そうしていなければ、きっと光に目がくらんで真っすぐに立っていられないだろう。


起き抜けに太陽はキツイ。朝の光で人は死ぬ。


とは言うものの、太陽の光というものは凄い。
暖房の温風など比にならない程のスピードで、部屋が。
体が温まっていくことが分かった。


もう一度確認した。
現時刻、7:15。


『準備…するか』


申し訳程度に温まった体でトイレに向かい、朝の準備を淡々と進める。


…その前に、靴下だけは先に履いて。


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