第6章 偶然目があっただけ
●藤堂 天● 〜1年B組〜
まさかとは思うけど、私…
・
無意識に顔面に拳入れたか??
だとしたら流石に怖いわ、自分が。
友人の赤い顔を目の当たりにして、再び自分の馬鹿力を疑う羽目になった。
けれど、それは流石にないと思ったし、あったらあったで私自身にも何かしらのダメージはあるはずだ。
それがないってことは、ここで暴力沙汰が起こっていないことは疑う余地がない。
ない…よな?
まさか右ストレートじゃないよな??
自問自答と共に、なぜか自信を喪失しかけている自分がいた。
その自信を取り戻すためにも、真実は友人に聞くことにしよう。
シンプルに「どうかしたか?」でいい。
もし仮に、本当に何かやらかしていて、その直後に「どうかしたか?」って聞くのは流石にサイコパスっぽいけど。
そこまで考えていても仕方ない。
こうして、変な意味も込めず、サイコパスでもない私が、友人に再び声をかけようとした…
…のより、少し早く。
?「あぁ!いや!!」
と、友人の方が先に口を開いた。
被せられただけならまだいい。
言う機会自体を奪われたわけじゃないから。
それに、返答してくれただけありがたい。
「なにかお詫びを」と言った後に僅かな沈黙があったから、都民に対してアウェーなことを口走ってしまったのではないかと焦っていたから。
だから一旦、こちらから何かを言うのは辞めて。
友人の言葉を待つことにしよう。
“お詫び”にあたる“何か”を、聞き逃してはならないから。
それなのに、
?「むしろ、ありがとうございます!!」
『は?』