• テキストサイズ

宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第6章 偶然目があっただけ


●藤堂 天● 〜1年B組〜


直前、彼はなんの前触れもなく、今日が初対面の相手に物理的に痛めつけられた。
しかも、相手の方から声をかけてきたのに。


その相手(私)は悪意を持ってなかったにしても、諸々を経ての「もう大丈夫だよ」。


そこに“真実”があるようには、どうしても思えなかった私が、何か裏があるのではないかと勘繰る程度には。


私の目はあまりにも多くのものを捕らえてしまっていた。
たとえ、体は90度強に倒れていようとも。


私がしでかしてしまったことの行き着く先が、「もう大丈夫だよ」であるわけがない。
そして、私のこれまでの経験から得られる予想は、こんな結末ではなかった。


友人の動向と予想の間で、かなり大きなギャップを感じた私は。
一人勝手に、再び自分の目に頼ることにした。


『ほ、ほんとに…?!手に怪我とか』


そう呟きながら、今度こそ私は完璧に体を起こして。
目の前にいる友人をしっかりと見つめ直した。


粗探しをするつもりはない。
嘘を見破ろうと思っているわけでもない。


ただ、真実はどうであれ。
私にはこの友人を心配する義務がある。


そしてしっかり見つけたよ。
理解もした。


「もう大丈夫だよ」が、友人が、初対面の同級生のために放った優しさであるということを。
そして、それを裏付けるように。


私が痛めつけてしまった左手が。
ほんのちょっとだけ、赤くなっていた。


だから私は…


『ちょっと見せて?!』


/ 417ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp