第6章 偶然目があっただけ
●藤堂 天● 〜1年B組〜
直前、彼はなんの前触れもなく、今日が初対面の相手に物理的に痛めつけられた。
しかも、相手の方から声をかけてきたのに。
その相手(私)は悪意を持ってなかったにしても、諸々を経ての「もう大丈夫だよ」。
そこに“真実”があるようには、どうしても思えなかった私が、何か裏があるのではないかと勘繰る程度には。
私の目はあまりにも多くのものを捕らえてしまっていた。
たとえ、体は90度強に倒れていようとも。
私がしでかしてしまったことの行き着く先が、「もう大丈夫だよ」であるわけがない。
そして、私のこれまでの経験から得られる予想は、こんな結末ではなかった。
友人の動向と予想の間で、かなり大きなギャップを感じた私は。
一人勝手に、再び自分の目に頼ることにした。
『ほ、ほんとに…?!手に怪我とか』
そう呟きながら、今度こそ私は完璧に体を起こして。
目の前にいる友人をしっかりと見つめ直した。
粗探しをするつもりはない。
嘘を見破ろうと思っているわけでもない。
ただ、真実はどうであれ。
私にはこの友人を心配する義務がある。
そしてしっかり見つけたよ。
理解もした。
「もう大丈夫だよ」が、友人が、初対面の同級生のために放った優しさであるということを。
そして、それを裏付けるように。
私が痛めつけてしまった左手が。
ほんのちょっとだけ、赤くなっていた。
だから私は…
『ちょっと見せて?!』