第6章 偶然目があっただけ
●no side● 〜1年B組〜
瞬間、互いの体温の違いが掌で感じられる。
その“他の人の体温”を、久しぶりに感じたからなのだろうか?
「勇気を出して、声をかけてよかった」と、天は思うことが出来た。
真面目な話、彼女にとっては“東京に来て初めてできた友”なのだ。
そして天はまだ学生。
主たるコミュニティは、学校で同学年と作るものだ。
顔見知りも、友人もいないこの土地で、新しい友に出会うことは。
天にとっては必須項目だったのだ。
しかし、もう心配はいらない。
なぜなら、目の前にいるこの男子生徒が今この時から。
天の、新しい友人なのだから。
…彼女はただ、そのことを新たな友人に伝えたかっただけなのだろうか?
教室の一角で男子生徒の手をとった天は、湧き上がってくる嬉しさや、喜びや…
そんな全ての感情を左手に乗せて…
あろうことか、ギュッっと強く握ってしまったんだ。
そして、
?「あぁあぁあぁ〜〜〜〜!!!!」
『っぎゃ?!!』