第5章 噂話

●相田 リコ●　〜校庭〜


見上げた私に代わって伊月君が。
すぐ隣にいる小金井君に言い返し始めた。


「コガと俺にはあんなこと言ってたけど、
　元は強豪校で即戦力だった選手だ。
　知識はあるのかもしれないけど、そもそも
　説得してマネになるような玉じゃない。」


伊月君の言った“あんなこと”は分からない。
恐らく、勧誘を断るためにポテチちゃんが、元バスケ選手であることを隠したうえで伊月君たちに言ったこと。


でも…


「その通りよ。」


彼の言ったことは正しいと思う。
元はコート上でプレイしていた子が、説得した程度でマネージャーになるなんて思えない。


まぁ…正味それは人によるかもしれない。
でも逆にだ。
「人によっては、本人がそれを許さない」という可能性も、往々にして言えることだと私は思う。


「コートの外からプレイを見る」ということが、どうしてもできない。って…


小金井君の気持ちは分かる。
それはほんと。


ポテチちゃんを見つけたのが、彼であるからこそ。
自分がポテチちゃんに出会ったことを、ただの偶然じゃないと思いたいってこと。
それは分かってあげられる。


それと、どうしてもマネージャーが欲しいということ。
これも分かる。
小金井君のことだから、どうせろくでもない目的なんだろうけど。
でも私だって、サポートメンバーは喉から手が出るほど欲しいと思ってる。


だけどね…


「マネージャーとしてなら続けられる、って…
　そんな程度にしかバスケ辞める意思がないなら
　普通に選手続けてるわよ」


彼女にも“理由”はある。