第5章 噂話
●相田 リコ● 〜校庭〜
そう考えた後…同意の意味を込めたわけじゃないんだけど。
私は伊月君の顔をチラッと盗み見た。
「どうだろうな…」
私の視線に気づいた伊月君が、次に口を開いた。
「少し話したくらいじゃ何も気づけなかった」
「それもそうよね…」
伊月君の言ってることは、間違ってないんだと思う。
だとしても、“故障説”が最も濃厚なのは、やっぱり明らかで…
「どうしても結論を出す」、と言うのであれば…
“藤堂 天”は。
ポテチちゃんは…
「だけどやっぱり、今はそれしか考えられ」
「故障かどうかは分からないけど」
最後まで言い切る前に、他の声が重なった。
「考えられない」と断言しようとする、私の考えを改めさせるかのように。
まさか止められるとは思っていなかったから、思わず声が聞こえてきた方に視線を向けた。
伊月君かと思ったけど、それはなかった。
視線を向けるその端の方で、伊月君も私と同様、声のした方に顔を向けてるのが見えたから。
それに、この声は明らかに伊月君じゃない。
「他の可能性もあるんじゃない?」
「「 え。 」」
そう言ったのは、小金井君だった。
「…って、水戸部が言ってる」
違った。
うんん、何も違わない。
現に声の持ち主は小金井君だった。
でもこの場合は、そう言うことじゃなくて…
私が視界に収めた時。
小金井君は確かに、自分の真横に立つ人物を指差してから言っていた。
それじゃあ、やっぱり。
「他の可能性もある」って言う、その見解は…
「水戸部君が?」
こうして、いつもの通り。
小金井君による、水戸部君の代弁が始まった。