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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第5章 噂話


●相田 リコ● 〜校庭〜


「………」

「うんうん。うん。
 なるほどね〜」


そう言いながら、小金井君は水戸部君に向かってコクコクと頷いている。


小金井君は分かってるみたいだけど。
やっぱり私には何がなんだか分からない。
というか完全に無言にしか見えない。


私に分かるのは、2人の間で、何かしらの会話が成り立っているということだけ。
だから待った。
小金井君が、水戸部君に代わって話し始めるのを。


「ポテチちゃんって、
 つまりはオレたち2年と同じ境遇でしょ?」


水戸部君から視線を外して、こちらに向き直った小金井君が話し始めた。


「同じ?どこが?」


すかさず伊月君が、自分の隣で繰り広げられる会話に参戦した。


一個下の後輩の女の子が、私たち“2年生と同じ”?
そう言われたら、「どこが?」ってなるのは当然だと思う。
接点が見当たらない。


一歩乗り遅れた私は、静かに伊月君の問いに対する水戸部君の答えを待った。


「なぜかは知らないけどさ。
 誠凛ってもともと女バスどころか
 男バスもなかったわけじゃん?」

「あ。」


そう、その通り。
創立したての誠凛には、なぜかバスケ部がなかった。
何故かはいまだに分からない。
だけど、当時一年生だった私は、特に気にも留めなかった。
興味がなかったから「あぁそうなんだ〜」くらいにしか…


そこにアイツが来て。
「バスケ部を創る」って言ったから…
色々あったけど、結果的に男バスが…


「でも…それとこれとなんの関係が?」


女バスどころか男バスがなかったのは事実だ。
けど、だからと言って“藤堂 天”が…うんん。
ポテチちゃんが、“2年生と同じ”ということにはならないんじゃ…


「そうだ。この話になんの関係があるんだ?」


だけど、そう思っているのは私と伊月君だけだったみたい。
少なくとも、水戸部君は別の可能性を見出した。
“故障”しか思いつかなかった私の意見を止めて、「可能性だけなら他にもある」と切り込んだ水戸部君が考えた、別の可能性って…なに?


「水戸部とオレは不本意だったけどさ」


またしても、水戸部君の言葉を代弁して、小金井君が口を開いた。


「あえて誠凛を選んだ奴がいるじゃん。」


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