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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第5章 噂話


●相田 リコ● 〜校庭〜


“スポーツ障害”。
またの名を、“故障”。
それは一般的に言われる“スポーツ外傷”。
つまり“怪我”とはまた違う。


スポーツにおいて、同じ動作を繰り返したことで、特定の場所が慢性的に傷むことを、そう言って表している。
それが、“使いすぎ損傷”とも言われる“故障”の意味。


それ自体は、別に珍しいことではない。
スポーツをする者は誰もが負うことになるリスクだ。
大事なのは、リスクを回避するための適切なトレーニングを常に考えること。


だけど、もし仮に。
“藤堂 天”が去年の全中から今にかけて。
一時的な“怪我”ではなく、完治不可能な“故障”を負ったのだとしたら。


話は、全く変わってくるんじゃない?


「選手生命を絶たれでもしなきゃ、
 ここまでするとは思えない…」


強豪に行かなかったわけじゃない。
行きたくても“行けなかった”んじゃないの?
だから“藤堂 天”は、誠凛(ここ)に…


かつては、確かに有力選手だったかもしれない。
けれどそれは、取り返しのつかない身体のトラブルで一気に覆って。
おまけに未発達の中学生の身体は、どうしたって心に追いつくわけもなく。
残酷にも、文字通り“過去にしかない話”になって…


それに、本人が気づいてしまったら?


ひたむきに培った自分の“最大限”を、過去に置いたまま進むしかないって。
もうこれ以上、向上は見込めないって。


いくら信じたくなくても、そんな現実を鼻先に突き出されたりしたら…
それは、絶望以外の何物でもないはず。


だから伊月君たちが会ったって言う、ポテチちゃんは。
つまり、そう言うことで…


あくまでも“仮”。
“仮”でしかないんだけど。


「え…じゃあポテチちゃん、
 バスケ出来なくなっちゃったってこと?!!」


ポテチちゃんは、“選手を辞めざるを得なかった元選手”ってことになる。


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