第5章 噂話
●相田 リコ● 〜校庭〜
受験の失敗?
進路っていうのは、結局のところ受験によって決まるものだし。
有力選手とは言え「あくまで学生である」ということを、忘れることを止めた時。
そう考えるのが1番妥当だった。
でも、それはあくまで一般受験の場合だ。
この場合で言えば、“有力選手”だからこそミソなんだ。
全国の決勝戦に進んで、しかもレギュラーだったのが本当なんだとしたら。
スポーツ推薦はいくらでもあったはず。
むしろ、推薦がゼロの確率の方が低いと思ってしまうくらいだ。
それじゃあ、なぜ推薦を使わなかったのか…
つまり、推薦はあったのに“あえて”選ばなかった?
だとしたらなぜ??
バスケを確実に続けることができる上、強豪校に入れる願ってもないチャンスのはずなのに。
それを断るなんてこと。
レギュラーだった子にできる?
「ん?」
その考えに至った時、私は一度自問自答した。
“確実に続けられる”?
ほんとうに?
これまでの予想は、あくまで“藤堂 天”が今も尚、選手としてプレイ出来ることが前提の上で成り立っている。
でももし仮に…
不本意に続けられない理由があるんだとしたら?
だとしたら…
「故障でもしたのかしら」
「「 え。 」」
それが、私が導き出した。
この条件に対する、“最も頷ける理由”で。
かつ、“最も違って欲しい理由”だった。