第5章 噂話
●相田 リコ● 〜校庭〜
小金井君が口にした言葉に、1番驚いていたのは。
何を隠そう小金井君本人だった。
「うぇえぇ〜〜〜!!マジでなんで?!!」
「気付くの遅ぇーよ!」
なんで?
意味が分からない…
「全中決勝に出場した。強豪校のレギュラー。」
口にしたって変わらない。
謎は深まるばかりだった。
その文字の羅列が何を表わしたがるっているのか、私は理解に苦しんだ。
まさか、そんな子が誠凛にいるだなんて。
想像もつかなかった。
全国クラスの実力があるのに、女バスがない高校に入学するなんて。
そう思った時、私の頭を最初に過ったのは。
“疑念”だった。
とどのつまり。
伊月君たちが会ったのは、ほんとにその子で間違いないの?
「ねぇ、伊月く」
「俺だって、自分がプレーできない高校を
わざわざ選ぶわけがないと思ったから、
最初は見間違いだと思った。」
まるで、私が失礼にも疑念を抱いていることを分かっているかのように。
伊月君は躊躇なく、それでいて私を責め立てることもなく、答えを返してきた。
その口調からは、彼の確信と。
本当に本当に悩んで。考えて。
考察を繰り返した末に、やっと導き出した答えなのだと理解できた。
そんな彼に「見間違いじゃないの?」なんて、とても言えなかった。
だけど、実際は言おうと思っても、言わせてもらえなかったかもしれない。
というのも、私が何かを言うより伊月君の方が早かったから。
「でも、ポテチちゃんは間違いなく、」
次に伊月君の口をついた言葉は、言うなれば“核心”だった。
私が口を挟もうとした、その意味さえ消し去ってしまうほどの。
それは…
「去年全中決勝に出場した
"藤堂 天" だ。」
限りなく、真実に近づける可能性を
持った言葉だった。