第5章 噂話
●小金井 慎二● 〜校庭〜
少しの沈黙の後に、口を開いたのは日向だった。
「ぽ…ポテチちゃん、だぁ?
んだよその不健康そうな名前…」
「いやいや不健康どころか、チョー美人!!
肌が透き通るほど美形なのに、
ポテチの袋抱えてて。
その姿がギャップで可愛くてよ〜」
しっかり勧誘してるって証明したはずなのに、相変わらず日向と監督の視線は冷たい。
だけど幸いにも、助け舟を出してくれる奴がこっちに居る。
「俺もポテチちゃんと話したけど、
いい子だったよ。」
証人、もとい伊月が、さっきと同様俺に加勢してきてくれた。
お前なら言ってくれると思っていたよ。
なんせ、“ポテチちゃんが心残りな者同士”だもんな!
「しっかりしていて、丁寧で。
同じ部活にこんな人がいてくれたらなー、
って思うような子だった。」
伊月の口から、ポテチちゃんの良さをギュッ!の詰め込んだような、的確な言葉がつらつらと出る。
その流れるように口にする様子は、確かにオレには出せない“信頼感”のようなものが感じられる。
さすが伊月、期待通りのナイスフォロー!
駄洒落言わなきゃただのイケメンだ!!
「へ〜いいじゃないの!
たしかにマネージャーは欲しいわよね。
その子がそのまま
ウチに入ってくれればいいのに。」
「だろだろ?!オレもそう思って、
ビラもしっかり渡しておきましたよ!!」
締めにグッ!と親指を立てて言い切ってやった。
さぁ、どうだ!
オレを褒めよ讃えよ!!
「ふぅ〜小金井君やるぅ〜!!」
「へへ〜オレのコミュ力にかかれば、
これしきの」
「オマエまだ諦めてなかったのか。
さっき“遠慮しますね”、って
完全に断られてたじゃねぇか。」
やや被せ気味に聞こえてきたそのセリフに、思わずギクッ!!と典型的な動揺をしてしまった。