第5章 噂話
●小金井 慎二● 〜校庭〜
「…とまぁこんな感じね。いまのとこ。」
監督の報告が終わるのと同時に、伊月を筆頭にオレたちは口々に思うことを言い合った。
もちろん、水戸部も。
「10人ジャストか。もうちょい欲しいよな。」
「いや、これからでしょ」
「うん…」
正直驚いた。
バスケってメジャーなスポーツだから、てっきり簡単に人数集まると思っていたんだけどな。
「去年はまだしも今年なら」って。
そういう意味で「多分これから」と思ったんだ。
けど、他の連中はそうは思ってないらしい。
少なくとも、監督は…
「そうゆう勧誘の方はどうなのよ。
ちゃんと声かけてるの…?」
監督がオレら…いや主にオレのことを。
睨みを効かせた疑いの目で見つめてきた。
「いやかけてるし!つか睨むなし!」
「ふーん?どうだかね〜」
どうやら監督は、人数がなかなか集まらない原因が、オレら勧誘組にあると思っているらしい。
勘弁してくれ、こじつけもいいとこだ…
だけど本当にオレらのせいかもしれないし、なんとも言えない…
それでもなんとか言い返してやりたい!!
でも肝心の謳い文句がない…
反復する葛藤と言葉に詰まる時間が、着々と焦りを募らせていく。
「オレだって…!オレだって勧誘に貢献…」
実際頑張ったよ?オレだって。
道行く新入生に声かけて。
ビラ渡して。
確かに上手くいかないことが沢山あったのは事実だけど…
「勧誘文句が変だ」って伊月に言われて。
「どう言えばいいんだ」って聞いたらしれっと駄洒落かまされて。
水戸部はやっぱ声ださねぇーし。
もっと最悪なのが、マネ最有力候補は逃しちゃ…
「あ!!」
「なによ急に?!ビックリするじゃない!」
そうだ!!
オレやってんじゃん、超ぉーアクティブな勧誘!!