• テキストサイズ

宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第5章 噂話


●小金井 慎二● 〜校庭〜


ほんのりと感じる疲労感に任せて、ちょっと休むつもりで椅子に腰掛けた。
…のに、休憩モードに入ったのも束の間。


「コラ勧誘チーム!
 こんなところにいたらダメでしょ!
 戻って有望そうなの連れてきて」

「えっ!オレは今連れてきたじゃん!」

「連れてこられたの間違いでしょ。」

「そ、そんな〜」


言い合っても監督に勝てないことは分かっていたけど…
優しくないド正論を返されて、オレは何も言えなくなってしまった。


せっかく座ったのに…
諦めるしかないんだけど、やっぱり立たなきゃダメ?
今のオレなら、椅子から立ち上がるだけでもエネルギーすり減るよ?


自分の上半身の重みがお尻に集まるこの感覚に、安心感と名残惜しさを抱きながら立ちあがろうとした。
その時…


「でも監督。正直ちょっと疲れたな…」


伊月の声がした。


声の主と言葉の意味がわかった途端。
オレにはそれが、救済に聞こえた。


垣間見えた希望に期待を寄せて伊月の方を見ると、その隣にいる水戸部も静かに頷いていた。
チームメイト2人の後ろ盾に、簡単に強気になったオレは、目の前の鬼監督と戦うことを決めた。


「そうだそうだ!少しは休ませろ〜」


今のは完全にボイコット。
さっき言い負かされた分、少し強めに主張した。


「監督、俺らもちょっと休憩しようぜ。」


その様子を見てかは分からないけれど、キャプテンである日向もオレに加勢する。
ガッツポーズをキメたいところだけど、それは我慢して監督の顔を盗み見る。


1 : 1 から1 : 4 になったんだから、流石の鬼監督のご意見も…?
ご意見も…??


「もう…しょうがないわね…」

「ぃやった〜!!
 ねぇ、喉渇いたからそれ飲んでもいい?」


監督のお許しを賜る傍ら、机の上にあるペットボトルのお茶と紙コップに手を伸ばす。


「あっ、ちょっと!それ新入生の!
 …飲みすぎないでよね!!」

「分かってるって〜」


こうして、オレたちは束の間の休息を取った。
これまでどんな新入生が入部しに来たかの話に花を咲かせて。


/ 358ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp