第4章 この道、桜吹雪につき。注意。
●小金井 慎二● 〜校庭〜
よし、気を取り直して!
今度こそ、ガンガン声かけるぞ!!
一度落ちた気分を立て直すのに、多少苦労するかと思ったのに。
珍しく伊月に褒められたことは、下がったオレのモチベを、想像以上にすぐ上げてくれたんだ。
いや〜こんなこともあるんだな?
だからやれるぞ!
部活勧誘!!
ダジャレをかまされなかったら、多分もっとよかったんだろうけど。
まぁ、伊月だしな?
仕方ない。
伊月だし。
あ、そうそう。
伊月の話を出したついでに言うと…
「さっきのあの子…
ポテチ、持ってたよな?」
その伊月の一言がきっかけで…
さっき声をかけた女の子は。
オレたちの中では、"ポテチちゃん"になった。
むしろ、“あそこまで話し込んどいて”の結果なんだけど。
タイミング的に名前も聞けなかったし…
これは完璧にオレのミス。
「名前知らないほど関係薄いのに、勝手に何言ってんだよ」って言われれば、それまでなのだが。
だけど、その他大勢の新入生の女の子たちと、その中のたった1人の区別をつけるためには。
張り巡らせた、オレの好奇心の糸を引いた女の子を、特別だと思うためには。
今のオレたちには、どうしても固有名が必要だった。