第3章 Reset. And...
●藤堂 天● 〜自室〜
目覚ましが鳴ると言うことは、今は朝の7時くらいだろうか?
『うっ…うぅ〜〜〜んっ…』
起きないといけないことは、頭では分かっても眠気にはなかなか逆らえない。
時々、私がベッドから離れられないのではないく、ベッドが私を離さないのではないか、と思う時がある。
「黙って解放してくれ」。そんなことを思いながら、自分とベッドの間に張った太い根を剥がすかのように、力の限りそれと自らの身体とを引き離した。
だがその努力も虚しく、“怠惰”と言う欲に溺れて気力を失った腕は、肘からポキッと折るかのように曲がった。
そして呆気ないほど簡単に、再びベッドへと飲み込まれるように落ちていった。
『あ"…あぁぁ…』
ダメだ。ベッドから出られない。
ベッドから出られないのは、なにも眠いからだけではない。
『うぅ…寒っ?!
あったかいのから離れたくない…』
極寒。とまではいかないにしても、ベッドを出たその先は、まだ冬の寒さを匂わせる。
体の末端から徐々に冷えていく、あの感じだ。
先程、目覚ましを止めるために布団から伸ばした腕の、その時の冷たさを思い出すだけで身震いしてくる。
東京って少しはあったかいんじゃないのか。
こんな話は聞いていない。
外気とベッドの中の温度差が、より一層私をベッドから離さない。
この静かな部屋には、私1人。
ベッドから出なくても誰も注意してくれない。
そして。
誰も、私が遅刻しようが文句は言わない。
ズル休みも然りだ、文句の言いようがない。
なんて言ったって。
この、屋根がある借り物の空間には、
文字通り。私1人しかいないのだから。