恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第66章 七支柱春药 / 🌫️・💎・🌊・🐍・🍃・🔥・📿
七瀬の両頬にほんのりとあたたかな温度が触れた。無一郎の掌だ。
「もっと口付けしてほしい。気持ちいいから」
「そう? 僕も君にしたいなあって思ってたとこ」
「ふふ、嬉しいなあ」
互いに笑顔になった二人の顔が静かに近づくと、唇同士がゆっくりと合わさった。
「ん、むいち、ろ…く」
「七瀬…はぁ、んぅ」
七瀬の頬から無一郎の両手が離れると、そのまま首・肩と体の線をなぞるように下降していく。
手つきは辿々しいが、丁寧に触れてくれる無一郎。七瀬はそんな彼を愛おしく思い、自分も無一郎の首に両手を回す。
サラサラとした長い髪が手の甲を滑らかに滑った。
「髪、」
「えっ? 髪?」
口付けの合間に呟く七瀬に、無一郎は顔を少しだけ離して問いかける。水色の双眸が僅かに戸惑いの感情を見せるが、それは一瞬の事だ。
「うん、サラサラで手触り良いから気持ち良いなあって思ったの。ずっと触っていたい感じ」
「良いよ、ずっと触ってて。七瀬は手も気持ち良いから」
「全然女の子らしい手じゃないよ?」
無一郎の首から右手だけを離した七瀬は、自分の掌を見ながらふうとため息をついた。
鬼殺で刀を握る事が日常になっている隊士は、男に限らず女もマメや剣ダコで皮膚が硬く、とても滑らかとは言えない。
「体も小さな傷がいっぱいだし、かなり劣等感があるんだよね。無一郎くんは男だからあまり気にならないだろうけど」
「確かに僕は傷なんて大した事ない。でもその言い方は嫌だな」
「え?」と七瀬が疑問に思った瞬間、右手を無一郎に掴まれ、そこへ柔らかな温もりが落ちる。
ちうちうと小さな音を響かせながら彼の唇が離れても、彼女はぼおっと目の焦点がズレたままだった。
「僕、さっき言ったよね。君の手は気持ち良いって。何か自分が言った事否定された気分だよ」
コツンと無一郎の額が七瀬の額に当たった。