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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第64章 霞屋敷のふろふき大根には柚子の皮が乗っている / 🌫️



中庭に面している縁側で、空を見上げながらビードロ玉をかざしているゆずはを見つけた。

柚子の香りの正体は、ゆずはの隣でザル一杯に干されている柚子の皮の匂いだった。


「何してるの?」

「! っわぁ無一郎さん、お帰りなさい! 柚子の皮を沢山貰ったから干してたの、お茶にしたり、匂い袋の中にいれたりねっ」

無一郎の事を考えていたら急に本人が現れて、ゆずはは驚いた様に慌てて言った。
慌ててビードロ玉を衣嚢(いのう=ポケット)に入れようとしたが、ビードロ玉は衣嚢に入らずに無一郎の方へ転がった。


無一郎の足元に静かにコロコロと転がっていくビードロ玉をみながら、ゆずはの顔が赤くなる。

『ああ…、私って本当に…』

最近は無一郎の顔を見ただけで、焦ってしまう。
顔を隠したくなる気持ちを抑えて、ゆずはは屈んでビードロ玉を拾う無一郎を見ていた。



「…君って本当によく落とすよね…」

それがまるで、自分達の出会いの時を言っている様で、記憶障害の無一郎がそんな事を覚えているはずないのに、胸が痛いくらいにドキドキした。

「はい、もう落とさないでね」

ゆずはの手に自分の手を添えて、無一郎はゆずはの手のひらにビードロ玉を置いた。

「ありがとう……」

そう言ってのぞいた手のひらに、ゆずはは目を見開いた。
コツンと手のひらでぶつかり合った2個のビードロ玉に、思わず息を呑んだ。

水色のビードロ玉と黄色のビードロ玉が寄り添う様にそこにあった。

ゆずはは顔を上げて無一郎を見た。
伺う様に自分を見下ろしている、無一郎は小さく息を吸った。


「ソレ見た時にゆずはを思い出して買ったんだ」

そう目尻を下げて、優しく微笑んだ無一郎に、ゆずはは目頭が熱くなり、我慢する様に目を細めた。



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