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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第64章 霞屋敷のふろふき大根には柚子の皮が乗っている / 🌫️


🐿️

無一郎が腕に負った傷を手当てする為、二人は庭から居間に移動して来た。

「よろしいですか?」

「うん」

稽古着の袖をまくり、負傷箇所を露わにした無一郎は、迷わず左腕をゆずはに差し出した。

『手合わせで木刀が壊れたり、ヒビが入るのは聞いた事があったけど…自主稽古で壊れるって…』


屋内に入る前、傷口は井戸の水で洗ったので、血はもう流れていない。どうやら折れた木刀のかけらで切ったとの事だった。

「無一郎様、もう少しご自分の体を大事にして下さい。人々を守る為ならまだしも、自主稽古で毎回このような怪我をされてしまうと…私は肝が冷えます」

「どうしてゆずはがそんな事気にするの?」


心底わからない。

首を傾げながらゆずはを見る霞柱は、真剣である。ふうと浅い息をついた彼女は小さな決意をし、無一郎に伝え始めた。

「私はこの屋敷専用の隠。主を気にかけるのは当然です。無一郎様は無事に帰宅されるのか、湯浴みの際の湯加減はどうか、それから食事は口に合っているのか…」

「美味しいよ、君のごはん」

「えっ…」

両手に持っていた包帯を思わず落としそうになるゆずはだ。

『美味しい? 今美味しいって言った?』


「だって僕、残した事ないでしょ」

「言われてみればそうですけど、何もおっしゃってくれないから…」

「何か言わなきゃいけないの?」

「いえ、強制ではない、ですけど」


【美味しい】—— たった四文字の言葉だが、食べた者が作った者に伝えると、心にぽっとあたたかな光が灯る。ゆずはは無一郎に伝えながら、両親との食事風景を思い出していた。


「ふーん、そうなんだ。僕料理出来ないからよくわかんないや。包丁ってどう使うの?」

「無一郎様、剣の扱いはあんなにお上手なのに…」

「剣術と料理って全然違うと思うんだけど」

二人を包む空気はほんの数分前までやや殺伐としていたが、今は違う。

「刃物と言う点は同じですよ」

「確かにそうだけど、使用する目的が違うよ」


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