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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第64章 霞屋敷のふろふき大根には柚子の皮が乗っている / 🌫️


🐿️

「何これ、ビードロ玉?」

一見少女のように見える人物だが、声色は少年の物だった。腰まである長さの髪は艶々で、触り心地も良さそうだ。

彼はゆずはと形状が違う制服を纏い、そこに付いている金の釦(ボタン)は【柱】の証である。


「初め、まして。立川ゆずはです……お館様の命でこの屋敷専属の隠に配属されました。霞柱様、ですか?」

「そうだけど」

ビードロ玉と同じ水色の瞳をした少年は拾ったそれを自分の掌に乗せ、彼女に差し出した。



—— ゆずはと無一郎、二人の出会いの瞬間である。










隠の少女と霞柱が出会い、二週間が過ぎた。
茜色から紺色へ空模様が変化しつつある、そんな夕暮れ時。

上がり框(かまち)に座り、草履を履いた無一郎は帯革(おびかわ=ベルト)に日輪刀を差すとスッと立ち上がる。


「霞柱様、いってらっしゃいませ。お気をつけて」
「……」

背後に立ったゆずはを一瞥もせず。
もちろん挨拶をする事もなく。無一郎は彼女をいない物と認識しているのだろうか。

ピシャン —— と無情に閉められた玄関扉の音が、ゆずはの胸にすきま風を吹かせた。

そんな彼女の両手には火打石がある。
武運や厄除けを願い、これを使って切り火と言う行いをするのだが、霞屋敷で使用された事はまだない。


『ご飯は食べてくれるけど、何も言わないから口に合ってるのかもわからないし、これを使う間もなく討伐に行っちゃうし』


自分はこの屋敷にいて良いのだろうか?
そんな懸念がほぼ一日中、ゆずはの脳内を充満していた。


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